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BD結 第8回 花田十輝さんに聞く『登場人物の感情は、面倒だからこそリアルに描く意味がある』

インタビュー&記事 結(yui)

物語の核となったオーディションの描写

―「1期で私がいちばん好きな展開がオーディションの下りで、あそこで一気に作品に引き込まれてしまいました。

花田 「オーディションは独特な緊張感や重さがありますね。特に上級生より下級生のほうが上手だということが往々にしてある。運動競技よりも上下逆転の可能性は高いと思うんです。でも一緒の仲間だし、落ちた受かったがあった後も一緒にやっていかなきゃいけないということを考えると、すごく複雑な思いがあるんだろうなと。」

―私は過去に吹奏楽部に所属していたことがあるのですが、吹奏楽部特有の、一緒にいなきゃいけない時間が長くて、妙に気を遣わざるを得ないという感じ、書かれるときにどのようなことに気をつけたのでしょう。

花田 「そうした部分はドラマとしては逆におもしろいし、原作の特徴でもあると思っていたので、書くのは気を遣いました。ただ、原作では地の文章で書かれている部分も多かったので、構成の仕事を受けるとき、この部分は原作ではこのくらいのページ数だけど、このくらい描かないと多分伝わらない、という話は何度かしました。特にオーディションの辺りは、優子や香織などが引き起こす人間模様も含めて、センシティブな感情が描かれているところなので、じっくり描きたいなと思っていました。」

―特に劇場版でシーンが追加されたり、あの長いシーンも優子がイヤな子に見えないという配慮がありますよね。優子への愛情を感じました。

花田 「優子が麗奈に頭を下げるシーンや、久美子と麗奈の対決直前の会話などは、原作から大きく膨らまさせてもらったところなので、すごく意識して書いていました。実際優子のこれまでの香織の関係と立場に立って考えてみたら、そりゃあ香織に吹いてもらいたいと思うでしょう。もしその気持ちを麗奈が知ってしまったらどうなるだろうって思って。そして久美子に対して「私が負けたら悔しい? 私が負けたらいやだ?」と聞くあのシーンにつながっていく。あそこではヒリヒリするくらい、あらゆる人の思いをそこに乗せたいと思ってました。それが重なりきったところで、最後の2人の演奏になるわけです。」

―脚本上はあのトランペットの芝居って……というと変ですけどどう書かれるんですか?

花田 「それはもう無理です(笑) 麗奈のほうが明らかにうまいという書き方しかできない。実際にそのようなシーンではよくある表現として、観客がざわざわとするとか、「すげえ」と誰かが言うということはあるんですけど、リアルに考えると、このシチュエーションで「すげえ」って言っちゃうほど空気読めないヤツはいないだろうって思って。そうなると、ほんとに音で聞いてわかってもらうしかないっていう形にするしかない。」

―普通のアニメだったら「そのほうがわかりやすい」という演出を使えない苦しみがあるのでしょうか。

花田 「それは苦しみというより不安ですね。こういった場面で、台詞や説明がなくて、果たして視聴者に伝わるだろうか。というのはシナリオライターなら誰もが必ずぶつかる問題です。ただ、この作品のスタッフなら台詞がなくても解るように描いてくれるだろうなと思ってました。そこは信頼関係ですね。」

―オーディションではなく、大会などの演奏の仕方というのはどうやって書かれているんでしょうか?

花田 「それも基本的には演奏していただいてという感じですね。脚本上でどうこうというよりは演奏録音するときにこのくらいのレベル、例えば高校生くらいのレベルの演奏をというお願いをして録音してます。」

―たとえばこの曲が始まります。その後この人がこういう表情で……なんてことは?

花田 「演奏に関しては基本的にはシナリオではお任せなんです。シナリオ書く前に、先に演奏何分って決める。そうなるとシナリオをこのくらいの長さにしないと入らなくなっちゃうなという感じで調整するという感じです。逆にシナリオライターからは例えば、滝先生に突然曲のある部分にユーフォも入って欲しいと言われて久美子が苦労とする展開にしたいと提案して、該当するパートを決めてもらうとかいう感じです。このパートはユーフォで吹いたら難しいからここにしよう。みたいな。」

吹奏楽という独特の世界

―吹奏楽に対して元々こういうイメージあったのでしょうか?

花田 「全然なかったです。この前も打ち合わせで話しててなるほどと思ったんですけど、大勢いないと成立しない部活なので、誰かしら必ず辞める。そうすると辞める辞めないという問題があってとか、誰と誰が仲が悪くてとかいう話に絶対になるんですっていう話を聞いて、なるほどと思いました。だからそういう意味では少人数の部活に比べていろんなことが起きやすいんだなと思いましたね。」

―それはどなたに聞かれたんですか?

花田 「スタッフの中に吹奏楽をやってた人間が何人かいるんでそこで聞いたりしました。逆に僕は吹奏楽の経験がないので、専門用語などに対して「それ、吹奏楽知らない人はわからない」と言える。知ってる人たちばかりだと、吹奏楽では常識的なことが普通に話されてしまう。そういう部分でバランスは取れていたと思います。」

―それ絶対吹奏楽部でしかないよね、というところを拾っていける。

花田 「そうですね。原作でもそうなのですが、葉月が初心者で入ってきてるので、分からない時は、葉月に何?って聞かせたり、吹奏楽独特の何かがあった時は、へえ。と感心させたりする。そうやって、吹奏楽を知らない視聴者も少しずつわかっていけるようにという形をとってましたね。」

―実際に演奏者の方に取材したということですが

花田 「いろんな方に聞きました。面白い話としては、トランペットでソロを吹く麗奈がいますよね。トランペットのパートは麗奈のファーストだけではなく、セカンドやサードもいるのですが、麗奈はファーストとしてはとてもうまいんですけど、セカンドとして一番かというとそうではないかも知れないという話がありました。ファーストとセカンドでは求められるものが微妙に違うと。普通なら、いちばんうまいやつがファーストで、次がセカンドで次がサードだと思いがちじゃないですか。だからそうとは限らないよという話を聞いて、吹奏楽の奥深さをすごく感じましたね。」

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© 武田綾乃・宝島社 / 『響け!』製作委員会