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BD結 第8回 花田十輝さんに聞く『登場人物の感情は、面倒だからこそリアルに描く意味がある』

インタビュー&記事 結(yui)

「なんかエロい」って言っちゃうアニメの主人公

―メインキャストの麗奈は最近のアニメではいそうでいなかったキャラクターですね。記号的ではなく、意思が服を着て歩いているような。

花田 「麗奈はやっぱり人気があったし、高校生ならではのとがった感じというか、「私負けない」というあの感じですよね。あれが『ユーフォニアム』という作品の軸というか、大きな真ん中の要素ですよね。シリーズ演出の山田さんは青春の青臭さ、監督は透明感、僕の感覚で言うと怒りというような言い方をしていますが、あの年頃の子ってなんかに対して何かに怒ってるんですよね。すべての現実に対して何か怒ってる。そういうものを麗奈は全部持ってる気がしてて。それでいてどこか抜けてるところや弱いところがある。原作読んだときから、麗奈はおもしろかったし、書いてても愛しかったですね。」

―麗奈を見ていると、漠然とした自信とか不安を抱えながらも前に進まなければいけないみたいなあの頃の気持ちをすごく思い出させてくれますね。

花田 「流されちゃダメだし、自分の理想とする自分をどうやって保とうかというところで四苦八苦してる感じですよね。それは久美子も持ってるんでしょうけど、麗奈は特にその辺が顕著で、さらに誰かに言うことで自分を追い詰めている。それが作品にとてもいい影響というか、いい緊張感を与えていた気がします。」

―麗奈は「孤高の存在」として周囲から浮いているけど、実は先生が好きとか、女の子にありがちな一面もありますよね。

花田 「その普通さというか、若さみたいなのがさらに青春っぽくって。友達なんか要らないって言いながらやっぱりちょっとほしい、とか、なんだかんだで恋に憧れたりとか。そういうのって、誰もが持っていると思うんですよ。たぶん麗奈が大人になって、同窓生にこの頃のことを言われたら、恥ずかしいと思うんじゃないかなぁ。って、そんなことを想像したりします。」

 

―久美子が麗奈と2人で出かけたときに白いワンピースの麗奈を見て、そこでぼそっと「なんかエロい」って言ったシーンがありましたよね。あれがすごく好きです。

花田 「あれは原作に近い台詞があったのですが、でもなんかそんな感じのこと言いそうだなと思いました。いいですよね、ああいうの。何か半分文句みたいな言い方といい、とてもいいと思います。」

―麗奈と久美子の2人だけの会話はどのようなイメージで書かれてるのでしょう?

花田 「うーん、なんだろう(苦笑) 常に思っているのは、お互いに依存し合いたくないねとこの2人は思ってるんだろうなってことでしょぅか。僕の中ではこの2人って一緒の大学を目指して、一緒に大学に入ってずっと友達。みたいなことはしないような気がしているんです。」

―すごくわかります!

花田 「2人それぞれ互いのことは大切に思っているけど、それで互いを縛りたくないし、互いがいないとやっていけないような弱い自分ではいたくないと考えている。同時に、離ればなれになってもこの信頼関係は決して壊れることはない。二人の関係は「引力」と表現されることがありますけど、本当にそう思います。揺らぐことない、自然な引力。だから、互いに自然に信頼し、依存することなくやっていける。」

―麗奈が東京の大学を受けると言っても、久美子は地元の大学受けてしまうというような……。

花田 「そういうイメージがありますね。そこで相手のことを気づかって自分の都合を曲げてしまうっていう2人ではない。そういう関係ではいたくないって思ってる気がします。」

『ユーフォニアム』に見られる女の子あるある

―1年生(久美子、麗奈、葉月、緑輝)についてお聞きしたいんですけど、自然とグループが分かれて、別々の居心地の良さが存在する、あの距離感が絶妙だなと思っています。どのように書いたのでしょうか。

花田 「あの距離感は、けっこう偶然な気がします。最初は、普通のアニメだったら一緒にお弁当食べたり、一緒に帰ったりするんでしょうが、久美子たちはたぶん一緒にいないだろうなぁと。自然にそんな風に考えて。」

―そういう展開になるかと思いきや、みんな気を遣ってる。なんかこう「行ってきなよ」みたいな、ちょっと微妙なグループが違うという、でも女子からしてみると、すごくあるあるなんです。

花田 「それも意図したというより自然な流れで。きっとこういう状況になったら、葉月が「いいよいいよ私達こっちでご飯食べてるから行ってきて」みたいなことを言うかな、と思ってくらいの感じでした。だからその距離感を描こうと思ってそうしてたのではなく、たぶんキャラクターが自然に動いてるうちに勝手にそうなったという感じですね。」

 

―原作ではそれぞれがその場にどういたかって書かれていないので、そこはアニメ上の演出かと思っていました。

花田 「この原作に限らず、小説はどうしても、そこでメインとなるキャラ同士の会話で話が進むことが多い。例えば練習中、久美子とあすかが話していれば、近くにいる緑輝や梨子や後藤はあまり喋らず描写で補うという形を取ることが多いのですが、アニメでそれをやると、何も喋ってない後藤がずーっと画面の端に写っていることになってしまう。なので、アニメではそこにいる原作では台詞のないキャラクターの台詞や会話を補っていくことが多いので、久美子と麗奈の近くにいる緑輝や葉月の台詞を補っている内に自然とこの四人の距離感が生まれたのかもしれません。」

―久美子と麗奈が2人きりだと、2人きりでしか生まれない距離感とか会話とかがありますよね。

花田 「彼女たちは電車で帰る。葉月が降りた後に初めて麗奈は本音をしゃべり始めるんですよね。それまでもなんとなく話はするし、思ったことも言う、意見も言うんですけど、いちばん大事なことは葉月が降りた段階で言う。それは葉月を信用してない、というよりは、葉月に聞かれるのはまだ恥ずかしい。久美子だったら話せる。という感覚なのかな、と思っています。」

―あの1年生の距離感と描写に関してはすごく女性的ですね。どちらの方が仲が良い、とかではなくて、それぞれの居心地が存在している感じ。わかります。

 

花田 「女性のスタッフもいますし、原作者の方がなにより女性なので、そのへんはたぶん参考にしてというか、意識しています。」

―男性から見て、そこでしか生まれない会話があるよねという、こちらの居心地の良さ、あちらの居心地のよさの違いってわかるものなのでしょうか?

花田 「それは分かる気がしますね。男性も女性が思っているほど単純ではなくて、ああいう距離感とか独特の会話とか男同士でも微妙にありますから。麗奈は、久美子に対して、自分と一緒にいてほしいとは思いながらも、だからといって他の友達としゃべるなというほどの心の狭いようなことは自分はないよ。みたいな……でも、困った時はやっぱりちょっと近くにいて欲しいみたいな。そういういろんな感情がないまぜになってるみたいな気持ちって男女に限らずみんなどこかにあると思うので。」

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© 武田綾乃・宝島社 / 『響け!』製作委員会