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BD結 第8回 花田十輝さんに聞く『登場人物の感情は、面倒だからこそリアルに描く意味がある』

インタビュー&記事 結(yui)

こんにちは! 結です!
 秋からたくさんのアニメが新しくスタートしました。みなさんはどんな作品を観ていますか?
 私が今期で期待していたのは『響け!ユーフォニアム2』です! 1期最終回から、ずっとずっと待ちわびていた「次の曲」が始まりました! とうとう!

 そんな時、部長から「シリーズ構成・脚本を担当している花田十輝さんに会えることになったけど来る?」というお誘いが……。

あれもきこう、これもきこう、と質問をノートにビッシリと用意して、花田さんにお会いしてきました!

≪取材日:2016年10月13日≫

キャラクター先行で作品になった『デ・ジ・キャラット』

―まず初めに、シリーズ構成とはどんな仕事なのでしょうか?

花田 「アニメの話数に合わせて、シリーズ全体のストーリーの流れをどう構成していくかを決める仕事ですね。『響け!ユーフォニアム2』の場合は監督やプロデューサーと、原作をどういった形でアニメ化していくか議論して、第1話で原作のここらへんくらいまでを、第2話ではこのくらいというたたき台を作り、13話に落とし込んでいきました。」

―原作を初めてご覧になった時の印象はいかがでしたか?

花田 「ストレートな青春ものとして描かれていると思う一方で、それだけに留まらず“暗い問題”や“重い問題”にもあえて正面から取り組んでいるというイメージを抱いていました。」

―第1期の時点で、第2期を作る予定があったのでしょうか?

花田 「当初は2期の予定はなく、1期で原作の1冊分をやり切ろうという話でした。その後、原作の続きが出て、アニメの続きも作ろうという流れだったように記憶しています。」

―登場人物について聞かせてください。まずは主人公・久美子から。作品の特徴的な部分にダイレクトに関わっていると感じるのですが、周囲を気にする受け身な性格で主人公っぽくないですよね。そんな久美子をどう思われました?

花田 「等身大の主人公と言えば、聞こえがいいですけど、主人公っぽい物語をひっぱっていく強さがないよねとも思えて……。はたしてこの子で作品をひっぱっていけるだろうか? という不安がありました。でも実際に動き出してみると、それがむしろ“いい形”というか“新鮮なもの”になってる気がしました。」

―私は、ステレオタイプな「良い子」ではない久美子が主人公だったからこそ、ん?と気になって、綺麗事だけで終わらないこの作品に出会えたような気がしています。久美子の演出は、さじ加減が難しかったんじゃないかなと想像していました。

花田 「シナリオを書いていて常に頭の中にあったのは、普通の主人公ならこういうけど、久美子だったらもう少し捻くれた、というか二、三歩冷めたことを言うだろうなぁということです。でもそれが、逆に普通と違う展開になって、いろんな感情が見えてくるきっかけになった。そういうことがこの作品では非常に多かった印象がありますね。」

―視聴者に嫌われる心配はありませんでしたか?

花田 「実をいうと、原作のテイストだと少しきつすぎるのではという相談はしました。なので、最初は意図的にそこをマイルドにして作品に入りやすくしていたのですが、途中から、そういうことは気にせず久美子はストレートにやってしまったほうが、キャラクターとして魅力的になるなと感じはじめて。ある意味、腹をくくったというか、ダメだったらしょうがないなという感じで。」

―具体的な話数でいうと、どのあたりですか?

花田 「たぶん麗奈とのエピソード。大吉山のあたりですね。何かが見えた。麗奈にいろいろと言われるシーンがあり、久美子の中でも何かが吹っ切れたはずだと、ちょっと感じるなかで、踏ん切りがついて……。それ以降はもう迷わずに書けました。それまでは久美子はこんなにボソボソしゃべっていていいのだろうか。と不安に思っていたのですが。」

―キャラクターが飾る必要がない場面で、ちゃんと飾らない喋り方をするのが良いなぁと。

花田 「ただ、それは結構勝負なんですよ。原作でもお姉ちゃんとの仲が悪くて、実にリアリティのある会話が展開されるんですが、美少女が多く出てくるアニメだとまず避ける展開だと思うんです。でも、そこを避けたら、この原作をやる意味はないって思いました。家族と話すときの、いかにもな空気感がある。返事は、あ、とか、ん。だけだ。それがこの作品の良さというか、空気感につながっていると感じていました。」

―女の子が家族の前で雑な喋り方をしてるのは、男性にとってショックではないのかな?と気になりました。女性視点で言うと、思春期って実際あんな感じだなぁと思いますが(笑)

花田 「嬉しかったのは、視聴者にこういう作品なんだっていう受け入れてもらえた部分。普段アニメを見慣れているファンからしたら、もう少し拒否反応や、ネガティブな意見があると思っていましたが、いざ放送して話が進むうちに、久美子はこういう子だよね、それでこそ久美子だ……みたいな反響があったのはうれしかったし、安堵した面でもありますね。作品によっては、受け入れられるか不安に思っていた部分が、予想通り受け入れられないことも多いので、放送される時はいつもドキドキです。」

―家族の知らないところで久美子にはシリアスな問題が起きていますよね。

「全然家族は知らないんだけど、久美子は久美子なりに学校で大きな問題を抱えていたりする。でもそれを一切家族に言うこともなく、普通にご飯食べたりしてるのって、どこの家にもある風景だよねと思いながら書いてました。」

―久美子の声を担当している黒沢ともよさんの演技の魅力もあったと思います。私はこの作品ですっかり大ファンになりました。脚本上で、声や演技の演出を指定することはあるのでしょうか?

花田 「黒沢さんの演技によって、久美子は際立った印象があります。久美子について脚本上では、セリフをあんまりきちっとしゃべらせない、あるいは質問に対してストレートに答えない。そんな性格の描き方を強く意識しました。

 しかしそのあとの“映像にする”“キャストが演技する”部分はおまかせしています。アニメ製作は基本的に集団作業です。脚本があり、コンテを描き、監督がイメージを膨らませて映像を作る。そして音響監督の意図に合わせて、キャストが芝居をします。アニメの作品は常に複合的なものですから。」

―逆にキャストがシナリオに影響を与えることはありますか。

花田 「ありますよ。キャストは1期のシナリオを書いている途中で決まりましたが、実際に役者さんが当てた声を聴くと、セリフを書いている際に今まで聞こえなかった「声」が聞こえてくるようになりますから。この子とこの子が「こういう会話」をしていたら、きっと「こういう喋り方になるな」とイメージ膨らんでいきます。それによって、書いてる台詞が微妙に変わってきている気がします「あの喋り方だとここに読点入れた方がいいな」とか。」

―黒沢ともよさんの声を聴いた際にどう思いましたか?

花田 「もうぴったりでした。なんの迷いもなく、これは久美子だなと。」

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© 武田綾乃・宝島社 / 『響け!』製作委員会