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BD結 第3回 「シドニアの騎士」岩浪美和音響監督に聞く『アニメの背中をあずかる関係』

インタビュー&記事 結(yui)

MISSION3

お久しぶりです、ぶるれい部の結です!
突然ですがここで一句!

「春アニメ 充実にけりな ぶるれい部」

秋の訪れを感じるこの季節。なぜこのタイミングで春アニメの話をするのか。それは3月にさかのぼります。
「音響監督の岩浪美和さんを調査せよ!」、そんな調査が舞い込んできたのです。

私がこの調査を断るなんて……「なぜにWHY?」ありえないでしょう(岩浪監督の代表作『ビーストウォーズ』名台詞が言いたかっただけ……)!
多くのアニメファンは岩浪監督のアニメ作品と共に人生を歩んできたはず。最近の作品では、4月から放送されたテレビアニメ『シドニアの騎士』も岩浪美和音響監督が担当された作品です。そして私も、何を隠そうその一人。いざ岩浪音響監督のいるスタジオへ向かいましょう!

アニメの音に責任を持つ音響監督

―そもそも音響監督とはどういった職業なのでしょうか?

岩浪「実写とは違いアニメの制作では、音に責任を持つ監督、すなわち音響監督がいます。様々な人々と協力しあい、最終的に“作品の音”について責任を負うのが音響監督です。具体的に言うと、アフレコでは声優さんとともに。映像に付随する音の3つの要素(台詞、効果音、音楽)を合わせるダビングでは、ミキサーさん、音響効果さんと協力して作品の音を制作します」

―声優さんとのお仕事では、どのような部分に配慮されていますか? たとえば演出をするというのは、具体的にどんな仕事なのでしょうか?

岩浪「皆さん勉強されてプロになっているので、根本的な所から演出することはありませんね。声優さんたちが持ち寄ったイメージを“選び取る”ような感じです。アフレコ時にはまだ画が完成していないこともあるので、最後の仕上げまで見越して演技の微調整をしていくことも重要ですね」

シドニアの騎士

―そんな岩浪さんの最新作『シドニアの騎士』は、音の面でも大きく力が入れられている作品ですよね

岩浪「40ヵ国以上、4000万人が視聴可能になるタイトルなので、映画と同じクオリティーで全12話を作るような気持ちで取り組んでいます。ベースはステレオ2チャンネル(通常のテレビ放送)、さらに(ブルーレイ用のパッケージでは)迫力ある重低音が楽しめる5.1チャンネルの音声も作っています。シドニアの騎士は、画作り自体が5.1チャンネル映えのするカメラワークなのですよ。例えば『何かが前からやってきて後ろへビューンと飛んでいく』シーンとか──。5.1chは音を縦横無尽に振りやすくて、SFとも相性がいいのです」

―テレビ放送用のステレオ音声も、5.1チャンネルを想定して制作しているのですね

岩浪「昔の作品はブラウン管のテレビでほとんどの人が視聴していましたが、現在ですと、薄型テレビやPCのストリーミング配信、スマートフォン視聴……など、視聴形態が様々です。こういう『ワンソースでマルチユースの時代』に進化すると、音にも工夫が必要になるのです。音が圧縮されていないブルーレイの音で満足してもらうというのは大前提ですが、様々な機器で再生されるテレビ放送用の音声でも皆に満足してもらう迫力を出すことが必要となります。SF映画を映画館で観ると迫力があるのにテレビだとそれが失われてしまう、という経験は大いにあると思うのですが、それは観ている作品が映画というソースだからです。そもそもテレビは人間の声を聞きやすくなるようにする、という基準で作られているものなので、同じソース(音声信号)を入れても、音の強弱や高低が圧縮されてしまうんです。『どの環境で聴いても迫力が出るようにする』ということは、視聴のパターンが多くなったがゆえに課せられている使命ですね」

―さらにシドニアの騎士ではグローバルスタンダードで作らなければならない……という悩みもありそうですね

岩浪「映画並みのクオリティーがハナから求められているんです」

―日本語のものをベースに吹き替えるのでしょうか?

岩浪「英語、ポルトガル語、スペイン語の3ヵ国語に吹き替えられます」

―海外の視聴者を意識することはありますか?

岩浪「そうですね、別作品ですが『キルラキル』が大阪での放送と同時に海外でネット配信されていたりするので、東京にいる自分より、海外の視聴者さんの方が先に観ていたり……といったことがありました。こんなことからもワールドワイドに広がっていることを、より意識するようになりましたね」

―シドニアの騎士での注目ポイント(聴きどころ)は?

岩浪「小山さんが担当した効果音ですかね(と、ここで効果音の小山さんに話を振る岩浪さん)」

小山「SFというジャンルは他のジャンルと比べて音の多さなど特徴があって、アタック(重低音)勝負なんです」

※小山恭正プロフィール

フリーで音響効果を手掛ける。『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダーズ』などで音響効果を担当。
『シドニアの騎士』では全ての効果音を手掛けている。

―SFといってまずイメージするものはなんでしょうか?

小山「僕は元々、映画『トランスフォーマー』や『スタートレック』などSFアクションものが好きで、そこから受けている影響もありますね。まだ日本の技術は追いつけていませんが、ハリウッドのレベルを目指しています」

岩浪「でもね、ハリウッド作品って迫力はあるけど皆同じなんです。何故かというと、音だけで百人ものスタッフがいる。音というのは、何十人がかりだと意外と個性が出ないものなのですよ。効果さんの個性というのも日本のアニメーションの特徴だと思います。アメリカでいうところの何十人分の働きを一人でやっているのですから、作家性が出てきますよね」

―なるほど。効果音の裏話、ぜひ聞きたいです! 例えばガウナ(主人公たちが戦っている謎の生命体)の鳴き声にも工夫があるのでしょうか?

小山「有機的なもの、生き物の鳴き声などをいろいろと加工しています。山野栄子(主人公の谷風 長道などと同じ操縦士訓練生。第2話でガウナに捕食される)を吸い込んだ後は、女の子の声を混ぜて逆再生して、ちょっとホラーチックにしたり。音をこねくりまわしましたね(笑)」

―「シドニアの騎士」はアフタヌーンで連載中の漫画を原作としていますが、原作モノを扱う上で心がけていることなどはありますか?

岩浪「原作を読み込まないことですね。読み込み過ぎると先が分かりすぎてしまう。分かりすぎた状態になると、大事なことを落っことしたりする。原作の映像化の場合、『落とされたエピソードは無視してもいいのか?』といった問題がありますが、それはアニメを初めて観る人にはいらない情報。僕にとってはフィルムがすべてですね。初めて観る人にどう楽しんでもらえるか、そこが重要です」

―ということは原作から落とされたエピソードは最初から読まない?

岩浪「一回読んだうえで意図的に忘れようとします。初めて観た方が満足してもらうものを作らなきゃいけないので、知り過ぎないこと。一番最初の観客であることを大切にしています」

―なるほど、では、一番最初の観客として臨むアフレコ現場とはどういうものなのでしょう?

岩浪「最後のバランスをとる仕事なので偏らないほうがいいのです。観客を自然に導いていくにはどういう作り方をすればいいか……思い込みや変な先入観をもたないようにすることが、モノづくりにおいて大切にしていることです」

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